釉薬の原料
釉薬は主に次の成分から成り立ちます。
1.骨格となる成分(珪酸、アルミナ分)・・・長石、粘土、珪石など
2.熔ける温度を調整する成分(アルカリ分)・・・ソーダ、カリ、石灰など
3.色をつける成分(金属類)・・・鉄、銅、マンガン、コバルトなど
そして、作りたい釉薬が何度でどのような色と性状(艶のある・なしなど)なのかを
考慮して調合します。
化学的成分
原料の販売
長石類
釉薬を作る上でもっとも多く使われているのが長石です。カリ、ソーダ、アルミナ、珪酸から成り
釉薬となる条件をすべて満たしています。代表されるものに福島長石、釜戸長石、
平津長石などがありますが、地域や等級によって価格も見た目も様々です。
長石はカリ長石、ソーダ長石、灰長石が混ざり合ったもので、釉薬に使われるものはカリ長石とソーダ長石の混合物(固溶体という)で、アルカリ長石といいます。
花こう岩に伴うペグマタイトには、石英、雲母と共にカリ長石が含まれ、福島長石がこれに該当します。同じくアプライトには石英と共に長石が含まれ、釜戸長石や平津長石はこの仲間です。
一方、花こう岩の風化した砂状のものをサバと呼び、瀬戸や瑞浪地区では長石原料として使われてきましたが、鉄分の含まれるものもあり、低品位とされています。
粘土類
釉薬が作品にうまく付着するために必要です。
また、釉薬の流れ具合や保存時の沈殿具合に影響します。
アルミナ、珪酸から成り、カオリン、蛙目粘土、木節粘土等が代表的で、この順に粘りが強くなり、
木節粘土がもっとも強い。(可塑性が大きいという)多く入れると艶消しになり易い。
珪石
地球上で一番多く、やきものの中心となる成分。珪酸から成り立ちます。耐火度が高く、また
可塑性がないので調整材として使われます。珪石分が多いと熔けたときに流れにくく、少ないと流れやすい。
アルカリ(土)類
リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、
バリウムなどは熔かすための原料です。また、どのアルカリを使うかによって色に変化をもたらします。
リチウム分はペタライト(葉長石)または炭酸リチウムから取ることが多く、
主に耐熱陶器(土鍋など)に使われます。
カリとナトリウム分は長石から取ります。
マグネシウム分はタルク(滑石)やドロマイトなどを使います。
カルシウム分は鼠石灰石から取るほか灰類に多く含まれます。
ストロンチウム分は炭酸ストロンチウム、バリウム分は炭酸バリウムから取ります。
同様な作用をする原料として鉛と亜鉛があります。鉛は低温で熔け、使いやすいので広く使われてきましたが、
その有害性のため問題となっています。特に食器類には使用しない方がよいでしょう。
鉛白やフリット類から取ります。
亜鉛分は結晶釉を造ったり、色釉に有効な材料ですが、絵具の色を変化させることもあります。
亜鉛華を使います。
金属類
鉄、銅、マンガン、コバルト、クロム、ニッケルの金属類が着色原料です。
基礎釉にこれらを加えると基本的に色が着きます。ただし、焼きかたによって、
例えば基礎釉や酸化や還元などの雰囲気、他の添加材によって色合いは変わります。
鉄は少量(1-2%)で黄色(酸化)または淡青(還元)、量が増えると(2-5%)茶色、
それ以上で(6%-)黒くなります。酸化鉄や弁柄、鉄分の多い土石から取ります。
銅は酸化で徐々に緑味を帯び、4%以上でいわゆる「織部」の緑になり、8%以上で銀黒となりやすい。
還元では少量の銅と焼成条件が合えば青紫(均窯)から血の赤(辰砂)となります。おもに酸化銅、
炭酸銅から取ります。
マンガンは添加量に応じて茶から黒茶、そして銀黒になります。特定な条件では紫味を帯びます。
酸化マンガン、炭酸マンガンを使います。
コバルトは少量で発色する強い青色の原料です。2%以上で瑠璃色となります。条件が揃えばピンク色の結晶が出ます。
酸化コバルトを使います。
クロムは基礎釉によって変化し、緑またはピンクから肌色となる。酸化クロムを使う。
ニッケルは褐色から淡緑色となり、藍色の結晶もでます。酸化ニッケルを使います。
その他に錫、チタン、ジルコニウム等が乳濁材(白色)として使われます。
錫は酸化錫から取ります。高価なため昔ほど使われていません。
チタンは酸化チタン、鉄分が入っていいときはルチルから取ります。
チタンは素地中の鉄分などの影響を受けやすい原料です。
ジルコニウムは変化の少ない安定した乳濁剤で珪酸ジルコンから取ります。
絵具・顔料
金属類で色を出そうとすると変化しやすく安定性に欠ける為、困ることがあります。
また、焼く前の色と焼いた後の色の差が激しく初心者にとっては戸惑うことがあります。
そこで事前に安定した色素として加工した材料が絵具や顔料といわれるものです。
基礎釉と合わないと色の変化を起こすこともあります。
灰類
燃料として燃やした草木の灰がやきものにかかり、自然の釉薬となりました。この事からヒントを得て
日本では石灰分やマグネシア分、アルカリ類を木やワラを燃やした灰からとる灰釉薬が発達しました。
これらには微量の燐酸分も含まれ、釉薬にすると独特の柔らか味や風合いが出ます。
そのために今でも陶芸として趣を出すために良く使われる材料です。
天然の灰は安定性にかけるため合成の灰類も利用されています。土灰(木灰)、柞灰(いすばい)、
ワラ灰、栗皮灰などがあります。
フリット
フリットとは一般にはガラス粉と思っていいでしょう。
原料の中には水に溶け易いものがあります。水に溶けている物質は乾燥の段階で表面に浮き出て
来て欠点となります。あるいは、鉛のように有害な原料は少しでも毒性を少なくする必要があります。
また、原料の中には焼いてちょうど熔けたときに化学反応をしてガスを発生し、欠点となることがあります。
こういった欠点を解決するために事前にガラス粉として作られたものがフリットです。フリットは様々な
タイプのものが市販されているのでその種類を考えて使います。メリットとして低温で熔けることと
そのために鮮やかな色合いが出せることがあげられます。デメリットとしては貫入が入りやすい。
長石などと比べて値段が高い。沈殿し固まりやすいなどがあげられます。楽焼き用の鉛の入った
フリットを白玉と言います。鉛が入っているか、いないか、ソーダ分が多いか少ないか、
硼酸分が多いか少ないかなどで選んで使います。
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